知らない人に話しかけられがち
12月29日(日)。
今日から旅行。昨日の晩からの冷えがハンパなくて厚手のコートを着て外に出るが重くて肩がこりそう、早くも暗雲が立ち込める。それは言いすぎ。
新幹線で名古屋まで。恋人が待ち合わせの時間に遅れるとのことで、その隙に昨日買えなかった滝口悠生『やがて忘れる過程の途中』を買いにジュンク堂書店まで歩く。いきなり荷物を増やして大丈夫か…?とは思うが、ほしかったのでしょうがない。再設定された待ち合わせまでにまだ時間があったので、勢いに乗ってロフトへ向かう。発売されたばかりのジェットストリームエッジがほしかったのだけれど売り切れとのことで、さらに東急ハンズにも行くも見当たらず、この調子で探し続けると今度はこっちが待ち合わせに遅れそうだったので頭を切り替えて移動。無事に合流。
待ち合わせ場所の駅から少し歩いて、商店街にあった古い喫茶店に勘で入店。店外のディスプレイに並んだ食品サンプルをたまたまいっしょに眺めていた老夫婦が、「うなぎが食べたいねえ」と言って去っていった。自分もちょいちょいあるが、それ以上に恋人は知らない人に話しかけられがち。
チキンライスとエビピラフを注文。どっちもおいしくてよい。古くから続いているお店には古くから続いているだけの理由があるのだ、というのを昔どこかで読んで、それ以来、そういうお店で当たりを引くたびこの言葉を思い出す。
腹ごしらえを済ませ、青春18切符で大阪を目指す。もっと空いているものだと軽く考えていたが、帰省のタイミングだからか、ぎゅうぎゅうではないががんばらないと座れない程度には混雑している。がんばる、というのは具体的には米原駅で乗り換え先の車両を目指して駆けることを指す。我々はしなかった。
せっかく青春18切符を使って移動するんだし、途中、京都で下車してお茶しようとか、気になるライブがあるから行ってみようか、などと話していたが、そんな気分ではなくなったのでまっすぐに新大阪を目指す。新大阪駅の新幹線改札の近くにドイツビールを飲める店があった、という記憶がふたりともあって、探してみたのだがよくわからず。改装中かなんかで表示の隠されている店舗が複数あったので、この中のどれかなのではと結論づけ、素直にホテルに向かう。ホテルでもビールは飲める。
あら素敵。
チェックインを済ませ、部屋に荷物を置く。さっきまではビールを飲む気満々だったが、ショーケース内のデザートがおいしそうなのでお茶に変更。柔軟に変えていくのだ。ライスプディングとシュトーレン、どちらも人生で初めて食べた。この世にはまだまだ自分の知らないおいしい食べものがあるのだな……。
ホテルを出て、あらかじめ石崎さんに教えてもらっていたホテル周辺のおいしいお店リストから選んだワインスタンドへ。
実は、カヌレも人生で初めて食べた。見た目とは裏腹に弾力があるし(かたいものだと思っていた)、甘くない。ぼくはどうにもこういうお菓子を甘いと決めつけている節がある。
店主に近くにおいしいラーメン屋がないか聞いたら、周辺にはあまりないし、年末なのでやっているかどうかも怪しいとのこと。ラーメンでなくてもよいのでおいしいお店はありませんかと食い下がってみたら、すぐ近く、歩いて15秒くらいのところにあるお店を紹介 、というか我々が入れるか確認してくれてありがたい。
ワインを楽しむためのお店、とのことで、そのコンセプトでお好み焼きなのがおもしろい。期せずしてワインのお店が連続したが、ワインにはまったく明るくなく、もったいないことをしているなあと思う。注文内容に合うワインを訊ねたら「すべてをカバーはできないので、どのメニューに合わせるかで変わってくる」との回答。もっともである。一気に信頼感が増す。
信頼を裏切られることなくどれもおいしかったが、とくに「シラスとカリカリ梅と大葉のうす焼き」が絶品だった。カリカリ梅、どんなものと組み合わせてもいい仕事をするのでは。自分にはできないタイプの仕事である。
完全にごきげんになってホテルに戻る。疲れのせいだろう、早めの就寝。また明日。